白紙









第九九八並列世界 淫魔の戯れ 第二部『激闘』


翌日の深夜、璃音を寝かし付けてから美沙は茜の勤めているという図書館へ向かった。
(まさかと思うけど・・・松下茜・・・あの時の女淫魔がこの街に来ていたなんて、だとしたら璃音くんのお父様とお母様を襲っ
たのも、あの女淫魔の仕業。そうなると次に狙われるのは間違いなく璃音くん・・・)
胸から下げた十字架を握り締める美沙、いつもの白いフードと黒いシスターの服装のまま足早に図書館へ向かう。
美沙が図書館に着いたのは、日付も変り街中が寝静まった午前二時。無論、閉館時間はとっくに過ぎていた。その図書館
は二階建て鉄筋コンクリート製の建物で、前面がガラス張りになっていた。そしてとっくに閉館しているはずなのに館内の照
明は全点灯状態で、ガラス張りの館内から美沙を照らしていた。
「やっぱり・・・この気配はあの女淫魔ですね。図書館を中心に結界が張ってあるわ、でもこんなにあからさまに結界を張る
ということは・・・油断?驕り?それとも誘っているの?」
美沙の目には、図書館を中心にドーム上にまるでシャボン玉の様な薄い膜が出来ていた、それこそ淫魔が自分の身を守る
為に張る結界だった。この中には淫魔の苦手な聖職者や、美沙のような敵意を持った人間は簡単に進入することが出来な
い。結界突破の神術を使えば簡単だが、それでは茜と対峙するまでに消耗してしまう。
(どうしましょうか、結界突破神術を使えば神気を消耗してしまいますわね・・・ここは多少のダメージを受けても、そのまま突
き破るしかないですね。)
神気を温存するためにも、あえて強行突破を決意した美沙。しかし図書館手前のゲートまで来て美沙は躊躇した、なぜなら
美沙は一度この女淫魔と対峙して敗れていたからだった。
(あの時は人質をとられて・・・仕方なかったのですわ。それに一度は汚された身体だって、聖母教会で清められたから、も
う大丈夫なはずよ・・・今あの女淫魔を倒さないと、璃音くんが危ない。)
意を決した美沙は十字架を握り締めたまま結界を突破しようと、勢いをつけてゲートへ駆け込んだ。
「あ?あれれ?なんともない・・・」
すんなりと結界障壁を突破した美沙。完全に肩透かしを喰らってしまった、てっきりそれなりの衝撃が来るものと身構えてい
たのに、なんの変化も無かった。
(・・・結界の規模に力をまわして、障壁力は無かったということでしょうか?それとも先月私と闘った事で消耗しきってしまっ
たのでしょうか?だとすれば間違いなくチャンスですわ、でもあの茜のことだから罠かもしれないですね。)
美沙はあまりに簡単に結界内に入れたことを不審に思ったが、すぐにそんな雑念は吹き飛んだ。正面中央にあるドアから人
影が現れる。
「残業帰りの職員さん・・・と言うわけではなさそうですね。元・職員さんでしょうか、ついでに元・人間ですね。」
現れた人影は合計六つ、背広姿の男性が二つと、警備員と思しき制服を着た男性の人影が二つ、そしてスーツ姿の若い女
性の人影が二つだった。どれも両手をだらりと垂らし、目は赤々と光りだらしなく開いた口元からは涎が垂れていておよそ人
間らしさは残っていなかった。しかも男性の露出した性器には長く伸びたホースのようなモノが喰らいつき、女性のスカート
の中にも同様のモノが入り込んでいた。
「可哀想に・・・あの淫魔の傀儡にされてしまったのですね、こうなってしまっては私に出切る事はただ一つ、その穢れた魂を
清め安らかな永久の眠りを与える事のみです。」
そう呟くと美沙は首から提げていた十字架を外し、短い方を両手で握り締めた。
「天上の我らが聖母様、その清浄の御力で我が信仰を糧に奇跡をお示し下さい。」
美沙が祭文を唱え終えると同時に、手にしていた十字架が光り輝き、その小さな十字架が長さ1m以上ある剣に変化した。
その剣は10cm程の幅広い両刃の剣で、中央には青い澄んだ宝石が埋め込まれていた。
「我が信仰と聖剣『アクアカイザー』にかけてあなた達を浄化します。」
手にした聖剣を一振りして宣言する美沙。
「グルルル・・・グォォォォ。」
人ならざるものに変化してしまった者共が唸り声を挙げながら美沙に接近してくる。最初に接近してきたのは半袖の制服を
着た若い男性警備員だった、唸り声を挙げながら二人同時に飛び掛ってくる。
「そのような動きでは、私を捉えることなど出来ませんよ。」
まるでダンスでも踊るかのように、軽やかな身のこなしでひらりと攻撃をかわす美沙。
「ギャウッ。」
「ギャァ。」
飛び掛ったものの見事にかわされ、空しく美沙の両脇を通過した警備員達。しかし美沙は、ただ単に攻撃をかわしただけで
はなかった。美沙はすれ違いざまに二人の両腕、計4本を綺麗サッパリ斬り落としていた。二人の腕は肘関節の少し上、半
袖の袖口の部分で切断され、鮮血が迸り美沙の足元では斬り落とされた腕がピクピクと断末魔の痙攣をしていた。
「まだ痛覚は残っていたご様子ですね・・・でもその苦痛もあと僅かです。すぐに安らかな眠りに就かせて差し上げますわ。」
そう言い放つ美沙の瞳には冷たい輝きが宿っていた、その間に二人の警備員は後退りして他の六人と合流した。
そして今度は背広姿の男性が襲い掛かる、今度は時間差を狙っているらしく、少し間をおいて左右から挟み撃ちにしようと
人間では成し得ないスピードで飛び掛ってくる。
「少しは頭が使えるようですわね、それとも淫魔がそうさせているのでしょうか?」
ズボンのファスナーから露出していた男性器を咥え込んでいるホース状の物体、それは淫魔が傀儡をコントロールする為の
触手だった、それは通称“悪魔の胎盤”と呼ばれていた。この奥にいる筈の淫魔から直接伸びているものだった。これを通し
て可哀想な被害者から淫魔はエナジーを吸い取り、逆に淫魔のエキスを送り込んで人ならざるものへ変化させる。男性の場
合はペニスを包み込み、女性の場合は秘部に挿入する。これを通して一度エキスを送り込まれて快楽の絶頂に達してしまっ
たら最後、耐性の無い一般人は自我を無くし淫魔の傀儡になってしまう。
「でも・・・私には通じませんわよ。」
先に仕掛けてきた右側の男性からの攻撃を身体を捻って避け、その回転の勢いをのせた聖剣を男性の首筋にあて、その首
を刎ねる。続いて襲い掛かってきた左側の男性が伸ばしてきた腕も余裕でかわすと、聖剣を逆手に持ち替えて後頭部から一
気に切り裂き、この男の首も刎ね飛ばした。
「悪魔の胎盤も切り離して差し上げます、この哀れな御魂に安らかな眠りを・・・」
美沙は祈りの言葉を呟きながら、二人の身体から伸びる触手を切り裂いた。すると二人の身体はその場に前のめりに倒れこ
み、ピクリとも動かなくなった。
「さぁ、次はどなたを送って差し上げましょうか?」
全く呼吸を乱さずに一連の動きを終えた美沙、いつものぼんやりとどこか抜けた感じのする美沙はここにはいなかった。
再び美沙が剣を構えるのと、先程両手を斬り落とされた警備員が雄叫びを上げるのはほぼ同時だった。そして警備員の雄
叫びが消えたとき、その身体に異変が起きていた。
「あらあら、いよいよ人間をお辞めになったようですわね。」
二人の警備員たちの斬り落とされた傷口からは、緑色をした長さ2m程の触手が三本づつ生えていた。しかもその先端は男
性器を思わる形状になり、白濁した粘液が滴っている。
「間違っても私のお洋服を汚さないで下さいね・・・その不浄な液体で。」
美沙が言い終わらないうちに合計六本の触手が鞭の様にしなり、美沙目掛けて襲い掛かってきた。空気を切り裂き目にも
止まらぬ速さで美沙に迫る六本の鞭、しかし図書館の照明に照らされたその触手を、美沙はまるで縄跳びでもするように、
軽やかなステップで衣服に掠らせる事も無く全て避ける。
「あと5・6本増えたら困りますけど・・・これくらいの数ならば十分避けられますわ。」
余裕で避け続ける美沙、そこへ事態を見守っていたスーツ姿の女性の一人が声を掛けてきた。
「ふふふ、それならその5・6本・・・増やして差し上げますわ。」
濃紺の野暮ったいスーツにデザイン性の欠片もない眼鏡をかけたその女性の胸元には、この図書館の司書である事を示
すネームプレートがぶら下がっていた。そのネームプレートには『主任司書 桐沢あやめ』と書かれていた。
「どうやって?」
少し目を離してその女性のほうを見る美沙、するとその女性とその隣の女性のスカートから新たな触手が3本づつ伸びてき
た。よく見ればこの女性たちのスカートの中には“悪魔の胎盤”が二本づつ消えていた、恐らく秘部とアナルに“悪魔の胎盤”
が挿入されているらしい。新たに6本の触手が加わり合計12本の触手が美沙を襲う。
「どうされますか?東方聖母教会のシスター美沙。」
「さあ?どうしましょう。」
美沙の顔から余裕が消える、懸命に避け続けるが既に何度か避けそこなって掠っている、黒いシスター服に白い粘液の筋
が何本も染みを作る。
「うふふ、無駄な抵抗はせずに私達と気持ち良い事しましょう・・・茜様から授かった、このオチソチソでたっぷり可愛がってあ
げるわよ。」
「こ、心からご遠慮申し上げますわ。私、人外の快楽には興味がございませんの。それに・・・」
「それに?」
美沙の顔に微笑が戻り、次の瞬間手にしていた聖剣が一閃のきらめきを発する。
「増えて困るのなら、単純な事なんですが・・・減らせば良い事ですわ。」
美沙の剣が最小限の動きで迫ってくる触手を斬り落としていく、一振り毎にボタボタと音を立て触手が地面に落ち、斬り落と
された触手が地面でのたうち、切断面から白濁した粘液が滴る。
「さぁ、これで元の数に戻りましたわ・・・それともまた生やしますか?」
再び余裕の表情を浮かべる美沙。
「うふふ、そうね・・・そうしましょうか。」
切断されたところから再び触手が生え、美沙に襲い掛かる。その触手もまた美沙の聖剣によって斬り落とされる。
「これでは限(きり)がありませんわね、やはりこういったものは根源から絶ちませんと。」
美沙はそう言うと、触手の攻撃を軽やかにかわしながら力を溜め、次の瞬間人間業とは思えない速さと跳躍力で跳ねた。
「ギッ?」
警備員だったモノが肉塊になったのは瞬き一回分の時間だった、ターゲットとなった警備員の視界から美沙の姿が消え、
その姿を追い求めて顔を上げたとき、その澱んだ目に映ったのは両手で剣を握り締め虚空を急降下してくる美沙の姿だっ
た、そして自分の額に尖った冷たい金属が割り入ってくる奇妙な感触・・・それが彼の最後に感じた知覚だった。
額に聖剣を突き立て、白目を剥き事切れた警備員の顔面に両脚で蹴りを入れた美沙は、その反動で聖剣を抜き去るとその
まま警備員の首を刎ね、もう一度聖剣を振り下ろし“悪魔の胎盤”を切り落とした。そして今度は地を這うような低姿勢で間合
いを詰め、まだ美沙の移動速度について来れていなかったもう一人の警備員に急接近すると、”悪魔の胎盤”を一刀両断に
した、そして真上に聖剣を突き上げその男の真下から喉を切り裂いた。
「ほら、これですっきりしましたわ。これで残ったのは、あなた達だけですわよ・・・悔い改めるのならば楽に聖なる母の御許
に送って差し上げますけど・・・如何なさいますか?」
聖剣を一振りし血糊を吹き飛ばす美沙、聖剣の表面を覆っていた血糊と共に、悪魔の胎盤と触手を切り裂いた時に付着し
た白濁した粘液も一掃する。
「悔い改める事なんて一つもないわ、それはあなただって茜様に教えていただいた事なんじゃないの?」
「な、何を言っているの。そんな事は無いわ!」
「いいえ、茜様から教えて頂いたわよ。シスター美沙、あなたって神に仕えるシスターなのに後ろで戯れるのがお好きだっ
たんですってね。この触手オチソチソでオマソコと一緒に犯されると、身も心も蕩けそうなほど感じちゃうわよ。さぁ、あの時
の快感をもう一度味合わせて上げるわよ。シスター美沙、あなたが望めば茜様は迎えてくださるわ、私達と一緒に・・・ね?」
両手を広げ美沙を誘うあやめ、その言葉と態度が美沙の神経を逆なでする。
「だ、黙りなさい!悔い改める気が無いというならばこれ以上の言葉は無用!」
美沙はあやめに向かって猛然と斬りかかる、しかし冷静さを欠いたその太刀筋ではあやめを捉える事が出来ない。しかも
その隙を突いてもう一人の女性司書が触手を使って攻撃してきた。
「くうっ・・・このままではいけませんね。まずは敵を絞り込まないと・・・」
横合いからの攻撃で幾分冷静さを取り戻した美沙は攻撃目標を目の前のあやめから、もう一人の女性司書に切り替えた。
「まずはあなたから解放して差し上げますわ・・・穢れた御魂に安らかな眠りを。」
美沙は素早く身体を翻すと、美沙とあやめが対決していることによって油断していたもう一人の女性司書に向けて、袖口に
隠していた純銀のタガーナイフを三本投げ付けた。
「く・・・あぁぁぁぁ・・・」
突然の事に目を見開く女性司書、その心臓には深々とタガーナイフが突き刺さり、命中箇所からは白煙が立ち昇る。そして
残りの二本は女性司書のスカートの中に消える“悪魔の胎盤”に命中し、純銀のタガーナイフが刺さった場所からグスグス
と解け落ちていく。
「さあ、これで残るはあなただけですね・・・私はまだ先を急ぎますのでさっさと通していただけませんでしょうか?」
聖剣を握りなおしてあやめと向き合う美沙、その言葉の通り美沙は先を急いでいた。全ての元凶、この先に待ち受けている
はずの女淫魔・茜を討つ為に。
「そうはいきませんわ、シスター美沙。このままあなたを通してしまっては茜様に叱られてしまいます。」
「その心配は無用です、この先あなたと茜が出会うことはありませんわ。あなたの穢れた御魂はもうすぐ私が浄化して、聖な
る母の御許へ送って差し上げます。淫魔となって穢れきってしまった茜の御魂はその場で消滅させますから、もうあなたが
茜の影に怯える事はないのですよ。」
ニコリと微笑む美沙、反対に険しい表情を浮かべるあやめ。
「そういうことを言ってるんじゃないんですけど・・・まぁこれ以上話し合っても無駄ですわね。」
「あら、奇遇ですわ・・・私もそう思ってましたの。」
二人は対峙したままジリジリと間合いを詰めていく。美沙は聖剣を握る手に力を込め直し、あやめは三本の触手の狙いを定
める。
先に動いたのは美沙だった、聖剣を真っ直ぐに突き出し一気にあやめへ向け突進する。あやめはそれを迎撃しようと三本の
触手を振るうが、美沙の動きが早過ぎて追う事ができない。やっとのことで美沙に追い付き、一本の触手が美沙の頭を掠り
純白のフードを引き剥がした、そして二本目の触手が美沙を捉えたかと思った瞬間、あやめの全身を物凄い衝撃が襲い、胸
元から脳髄まで激痛が走った。
「グッ・・・ハァッ・・・カハァッ。」
間一髪二本目の触手が美沙を捉える前に、美沙はあやめに体当たりをしていた、聖剣を突き出したままの状態で・・・体当た
りをした美沙の動きが止まったのはあやめの胸を剣が貫き、背中から血塗れの聖剣が突き出てきてからだった。
「残念でしたわね、あやめさん・・・これが私とあなたの差ですわ。聖母様の庇護を受けた私と、淫魔の穢れを植付けられてし
まったあなたとの差です。」
聖剣を握る手にもう一度力を込め、あやめを貫いた聖剣を90度捻る美沙。
「こ・・・こんな・・・ぐはっ、あ・・・あかね・・・さまぁ。」
大きく見開いた瞳から大粒の涙を流すあやめ、そして最後の一言と呟くと口から大量の血を吐き出した。
「うん・・・もぅ・・・汚れてしまいましたわ。」
前傾姿勢であやめに接していた美沙は、フードの取れた頭からまともにあやめの吐き出した血を被ってしまった。忌々しげに
呟き、美沙はあやめから聖剣を引き抜くと、秘部とアナルから伸びる“悪魔の胎盤”を斬り捨てた。
「これでこの方の御魂も淫魔から解放されるでしょう・・・安らかな眠りを・・・」
聖剣を握ったまま手を組み暫し祈る美沙、その時切り離され地面でのたうつ“悪魔の胎盤”から白濁した粘液が美沙に降り
注いだ。
「嫌ですわ・・・また汚れてしまいました・・・早く帰ってシャワーを浴びたいですわ。」
あやめの吐き出した血と白濁液を浴びてしまった美沙、うんざりとした顔で呟いた。そして聖剣を握りなおし、落ちていたフード
で血と粘液を拭うと、仇敵・茜が待つ図書館内へと入っていった。










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