白紙

第801並列世界 『ショッカー女子高へようこそ』
       光子変貌編第一部 『仕組まれた罠』


「おぉ〜〜〜い、光子〜〜〜〜〜っ」
放心状態の光子の前で愛莉が懸命に光子の魂を引き戻そうとしていた、
「・・・・・・・・・」
だが肝心の光子は、ある回想に浸り現実世界が見えていない。
「おぉ〜〜〜い?光子姫〜〜〜!目を開けたまま寝るな〜〜〜っ!」
愛莉は光子の正面に座り懸命に話しかける。
「・・・・・・・・んっ?」
ここは黒伽倭理化学大学の学生食堂、光子の長い長い回想はようやく終わりを告げ、愛莉によって現実へと引き戻された。
「んっ、じゃない!五分以上呼びかけたんだぞ!」
やっと光子の魂が戻ってきた、ぼんやりとしていた瞳に光が宿る。
「愛莉が遅いからだよぅ、退屈しちゃって・・・」
「それで、目を開けたまま夢の国?またあの頃の?」
愛莉は手にしていたアイスコーヒーを飲みながら尋ねる。
「うん、愛莉と出会ったあの頃・・・」
光子が遠い目をして回想に耽りそうになる、暇さえあれば光子の意識は空想の世界や回想シーンに飛んでいってしまう。
「もう、恥ずかしいからその話はナシ。」
照れ笑いしながら愛莉は残りのコーヒーを一気に飲み干した、
「わかったわかった。で、愛莉大事な話ってなによ?」
光子が長い回想に浸りながら愛莉を待っていた理由を尋ねる、
「あ、そうそう。あのね、光子明後日からアルバイトに行こう!」
両手の拳をテーブルに載せ光子の方へ身体を乗り出す愛莉、周りの視線なんか全く気にしていない。
「明後日からアルバイト?急ねぇ、なんの?」
愛莉の提案はいつも急だった、高校2年の夏には『長期バイトを見つけてきた!三食宿付き!海の綺麗なリゾート地!』と言っ
て連れて行った先は与那国島。確かに海の綺麗なリゾート地で三食付・・・それは海の家のアルバイトだった。透き通った海も
夜空の満天の星も綺麗だったが・・・何も教えられずに飛行機に乗せられて、気付いた時には与那国島空港。何も無い滑走路
に降り立ったその時まで愛莉の行動力を見くびっていた自分を恨んだ。
 だから今回も光子は愛莉の見つけてきたアルバイトと言う事に一抹の不安を覚えいていたのだった。
「治験だってさ、昇華製薬の健康ドリンクだって。」
「健康ドリンクの治験?ならたいしたこと無いでしょうけど。」
今度は『沖ノ鳥島で海洋調査』とでも言われると思っていた光子はホッと胸を撫で下ろした、
「でね、なんと南の島の保養所で四泊五日!プライベートビーチで海水浴も可!」
「えぇ〜〜?島ぁ〜?泊まり込み?」
(やっぱり南の島なのね・・・しかもまた泊り込み?)
愛莉の見付けてくるアルバイトはいつも奇想天外だった、またか・・・と少し困った顔の光子に畳み掛けるように愛莉が説明を
続ける。
「そうだよ、さすが一部上場製薬会社、見て見ておしゃれな保養所!」
そう言うとカラー刷りのパンフレットを取り出した。大学の学生課で斡旋していたものらしく、『黒伽倭理化学大学−学生課』の
スタンプが押されている。
「ホントだ!いいわねぇ〜、けど申し込み期限過ぎてるよ。しかも2人一組で三組まで、定員6名?変な条件ねぇ。」
確かに保養所の外観はおしゃれな南欧風の建物だった、その点には満足した光子だが変わった募集条件に疑問を抱いた。
「ところが・・・ちゃんと申し込みして、しかも選考通ってま〜す。」
愛莉はそう言って郵送されてきた招待状を取り出す、そのカードには『三浦光子様』『米村愛莉様』と書いてあった。
「でも、“申し込みには毛髪1本送付”って、あっ!?」
自分では髪の毛を抜いて応募した覚えは無い、だがある出来事が光子の頭をよぎった。
「そう、この間枝毛処理したときに一本失敬して送りました。」
三週間ほど前、愛莉の家にお泊まりした時に愛莉が無理矢理光子の枝毛処理をしていた、愛莉はその時ちゃっかり髪の毛を
一本拝借していたのだった。
「抜け目無いわね〜、ところで、報酬は?」
「それがね・・・なんと1日5万円!5日で25万円!」
「・・・怪しすぎない?そんな高額。」
なにが何でも胡散臭すぎる、健康ドリンクの治験くらいで日給5万円は常識の範疇外だった。絶対に何か裏があると疑うのは
全人類共通だろうと光子は思った。
「でも、一部上場企業の昇華製薬だよ。大丈夫だって!なんか予定あるの?」
全人類共通だと思ったが、一部例外もあるようだった。光子の目の前にその“一部例外”がやる気満々で熱弁をふるっていた
からだ。
「予定は何も無いけど・・・でも、鏡子が心配だし・・・」
言い出したら聞かない愛莉の性格からして何を言っても無駄な事は光子も十分理解していた、だが“ある理由”で入院してい
た妹の鏡子の事が心配だった。
「鏡子ちゃん、具合良くないの?」
はしゃいでいた愛莉が急にしおらしくなる、愛莉も鏡子と仲が良かったので心配はしていたのだった。
「意識は戻ったし、精密検査でも異常はなかったんだけど・・・。」
「じゃ退院したの?」
しおらしかった愛莉の顔がパッと明るくなる、一時は意識不明の状態だった鏡子だが退院したのならば今は心配する事は無い
だろう。
「うん、一応様子を見るために今週一週間は自宅療養してるんだけど・・・来週には学校にも行けるし。」
「それじゃ、来週は問題ないじゃん。行こぉ〜よ〜ぅ。」
テーブルにしがみつきウルウルした目で光子の目を見詰める愛莉。
「も〜〜ぉわかったわよ。その目で見ないの。」
光子にとってこの愛莉の行動は“ツボ”だった、この目で見られると光子は拒絶する事が出来ないのだった。
「やった〜〜ぁ、光子大好きぃ〜〜〜。」
そう言って招待状を手渡す愛莉、そのカードには集合時間と集合場所、それに簡単な注意点が書いてあった。

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集合時間 7月16日(土)9:00集合場所 蔵闇市−蔵闇電鉄 蔵闇中央駅東口コンコース。
       集合場所に送迎車がお迎えに上がります。その後中央桟橋から保養所のある亜玖島まで
       当社のクルーザーで移動していただきます。(乗船時間は約8時間です。)

治験場所 昇華製薬 亜玖島保養所
諸注意  計測機器に悪影響を及ぼす恐れがありますので携帯電話は保養所に到着次第お預かりさせて
       いただきます。(保養所は圏外です。)
       保養所のある亜玖島は当社のプライベートアイランドです。
       保養所には各種設備もございます、お気軽にご利用下さい。
       保養所前の砂浜は遊泳可能です。
       蔵闇市中央桟橋から当社保養所まではクルーザーで約8時間です。
       治験開始直前に採血検査を行います。
       治験中も普段通りの生活でお願いします。(海水浴・運動も可能です)
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「それじゃぁ明後日から治験旅行だね。」
光子が招待状を受け取った事でアルバイトを承諾してくれたものと感じて嬉しそうにする愛莉、
「まっいいか。南の島でのバカンスを楽しみましょ。」
その愛莉の喜びようを見てこれ以上勘繰る事をやめた光子、折角喜んでいる愛莉の気持ちに水をさすのは光子も嫌だった。
「で、光子。これからどうするの?」
「取り合えず・・・見たかった映画があるんだけど、それを見てから・・・どうする?」
光子と愛莉が同時に身を乗り出す、顔と顔が急接近する。
「ちなみに、私のママ今週末も研究所に泊まり込みだって。」
急に声のトーンを落としてコソコソ話し出す、二人の頭に浮かんでいる事はほぼ同じ事だった。
「鏡子の事で、二週間ほどお預けしてたものね・・・我慢できないんじゃない?」
ぼんやりとしていた光子が妖しい笑みを浮かべる、その顔は恋人の光子ではなく御主人様の顔に変わっていた。
「あぅぅん、意地悪ぅ。光子もなんじゃないの?」
愛莉は牝奴隷の顔になっている、二週間の淫欲の鬱積は暴発寸前まで高まっていた。
「ふふっ、それじゃ今日は乱れる?」
「そうくると思って・・・茜先生に連絡入れてるの・・・」
「まぁ用意周到ね、茜さんはどうって?」
最近は愛莉の家でなく茜のマンションで3Pに興じる事が多かった、茜の家は防音・防振が完璧に施された高層マンション。
近隣に気を使うことなく嬌声を上げられる上に、茜は様々なラバーアイテムや性の玩具を持っていてM性の愛莉だけでなく
本来S性の光子も、茜の前では牝奴隷扱いされる事を望んでいた、また責められるだけでなく光子は御主人様としての手解
きもうけていた。だから二人にとって茜の家で“する”と言う事は特別な事だった。
「『先に帰って用意してなさい。』だってさ。」
ニンマリとする愛莉、向かい合っている光子も同じ表情をしている。
「それじゃ映画見てから、晩御飯の買出しして茜先生のウチに行こ。」
光子は席を立って愛莉と学生食堂を出る。
その日の夜、茜の部屋では夜更けまで凶宴が続いていた。

7月16日土曜日、光子に付き添われて寝ぼけ眼の愛莉が蔵闇中央駅の東口コンコースに突っ立っていた。
「うぅぅ、眠いよぉ〜〜。」
寝惚け眼を擦りながらボーっとして突っ立っている愛莉、
「いい加減起きてよ。はい、コーヒー。」
光子は途中のコンビニで買ってきた缶コーヒーを手渡す、一昨日の夜始めた狂宴は金曜の昼間茜が付属高校へ出勤してい
る間(この間に光子と愛莉は死んだように眠って回復)の中断を挟んで、昨日の夜も催され結局明け方まで続いていたのだっ
た。
「ううぅ〜ん・・・茜様ってどれだけ体力があるんだろう・・・休み無しで責めっぱなしだったよね。」
合計すると20時間以上責められ続けた愛莉がぼやく、
「そう言えば・・・茜様って金曜日仕事にいかれてたのよね、保健室のベットで昼寝でもしてたのかしら?」
光子は一昨日の夜は愛莉と一緒に責められていたが、昨日の夜は茜と一緒に愛莉を責めていたので愛莉ほど消耗してい
なかった。ちょうどその時、女性が後ろから声を掛けてきた。
「あのぉ、三浦光子様と米村愛莉様でしょうか?」
その声に振り向く二人。
「「そうですが?」」
振り向いた先には濃紺のスーツを着た女性が立っていた。
「茜さん!?」
「なんで茜先生がココに?」
二人は驚いて声を挙げた、
「いえ、私は松下葵(まつした あおい)です。茜の双子の妹です。」
「双子の・・・」
「妹さん?」
二人は信じられなかった、悪戯の好きな茜の事だ下手をすればドッキリかもしれないと光子と愛莉は辺りを見回していた。
「お二人は茜姉さんのお友達でしたね、それなら誤解されても仕方ありませんが正真正銘の別人ですよ。それでは車へご案
内します。」
光子と愛莉は葵と一緒に駐車場に向かう、駐車場には黒のミニバンが待っていた。光子と愛莉が乗り込むとショートカットの
女性が運転席に座ったまま会釈してきた。
「はじめまして、治験スタッフの美島巴(みしまともえ)です。よろしく。」
「「こちらこそ、よろしくお願いします。」」
既に他の4人はすでに乗車していたので光子達が乗り込むと、葵はドアを閉め自分も助手席に乗り込み巴に合図を送る。
「それじゃ、発車します。ちょっと狭いですけど桟橋まで我慢してくださいね。」
それから10分後ミニバンは中央桟橋の駐車場に止まっていた。
 光子と愛莉達6人は荷物を持って葵の後ろについて行った、ある船の前で立ち止まると葵が光子達の方を向き直った。
「こちらが我が社のクルーザー『クイーン・オブ・リキドラ』です。」
光子達は唖然として、桟橋に係留された大型クルーザーを見ていた。
「私、てっきりでっかい漁船みたいなので行くと思ってた。」
「さすが一部上場企業、豪華大型クルーザーか・・・」
光子達の視線の先には2,500tクラスのライトグレーの大型クルーザーが係留されていた、
「どうぞ、乗船してください。スグに出航しますよ。」
巴に促され一同は乗船するとまず船内サロンへ通された、サロンには昇華製薬の社員と思しき女性が3人待っていた。
「亜玖島までは8時間の予定です。出航前に同行するスタッフの紹介をしておきますね。」
葵はそう言うと最初に自分の自己紹介を始めた、
「まず、私から・・・治験助手を担当します松下葵です。」
次に髪の長い落ち着いた感じの女性が自己紹介する、
「私は泉水 遥(いずみはるか)です。治験の責任者です、皆さんよろしくお願いします。」
次に先程車を運転していたショートカットの女性が軽く手を上げる。
「美島 巴です。技術担当です。」
最後に愛莉のようにポニーテールにした光子達と同い年位の女性がと元気良く自己紹介をする、
「ボクは柊飛鳥。雑用係です、よろしく!」
「それでは出航します、8時間の船旅をお楽しみ下さい。」
そう言って遥と巴はサロンから出て行った。あとに残された2人の社員と6人の被験者はどうすればいいのか分からず取り合
えず、サロンの椅子に腰掛けていた。すると沈黙を破るように葵が声を挙げた、
「そういえば皆さんの自己紹介がまだでしたね。米村様から宜しいですか?」
急に話をふられた愛莉は戸惑いながらも立ち上がって決まりきった形の自己紹介をする。
「あ、あたし? え〜っと私、黒伽倭大1年の米村愛莉、よろしくね。」
「私も黒伽倭大1年生の三浦光子です。よろしく。」
続けて光子が名前を名乗った、とりあえず時計回りに自己紹介にすることなったようだ。光子の隣に座っていた女性が立ち上が
る。
「あたし、藤沢 智美(ふじさわ さとみ)黒伽倭大1年よ。」
続けて次々と名前を名乗る、
「私は剣崎 恵美(けんざき えみ)智美と同じ黒伽倭大1年です。」
「沢井 楓(さわい かえで)黒伽倭大1年です。」
「倉橋 夏美(くらはし なつみ)私も黒伽倭大の1年生です。」
クルーザーのエンジン音が高まり始めた時、一通りの自己紹介を終える。
「なぁ〜んだ、みんな黒伽倭大の1年生だったんだ。」
学生課のアルバイト斡旋なのだから当然と言えば当然なのだが誰もそのことに気付いていなかった。
「そういうことね、ところで米村さんってあの『錬金術の火乃華』さんの娘さん?」
目を輝かせながら智美が尋ねてきた、母親が有名人という事でこの手の質問には慣れている愛莉。
「うん、そうだよ。ちなみにコッチはあの『キメラの水面』の長女だよ。」
愛莉は光子を指差しながら答える、
「コッチってなによ!それにその仇名で人の母親呼ばないでくれる?」
『錬金術』はともかく『キメラ』と言うのはあまり良い表現では無い、そのこともあって膨れっ面になる光子。だがその『キメラの
水面』に反応した人物がいた、
「ええぇ〜〜っ、あの『水面教授』の娘さんなの?是非お友達になりたい!。」
光子の前に飛び出してきたのは夏美だった、
「え?なんで?ウチのおかあさんって意外と人気者?」
好奇の目で見られることはあったが、敬意の目で見られることはあまり無かった光子は思わずニンマリとする。
「違うと思うよ・・・この子もマッド研究者の卵かもよ・・・」
愛莉が夏美の正体を見抜いた、ほぼ正確に・・・そしてその隣から楓が口を挟んだ。
「卵じゃなくて、もうヒヨコに孵っているわよ・・・ウチの夏美は、第2の水面教授目指してるからね・・・」
(ウチの夏美?まさかこの子達・・・)
光子は夏美と楓を見る、どうもこの二人から自分達に似たなにかを感じたようだった。だがそれが何なのかはハッキリとわか
らなかった、
「そりゃ危ない・・・学校でバイオハザード実写版は勘弁してね。」
愛莉がおどけて話す、
「どういう意味よ、わたしのおかあさんはマッド研究者じゃないわよ。」
「私もマッド研究者のヒヨコじゃありません!。」
光子と夏美が抗議の声を挙げる、そんな二人と対照的に恵美はうっとりとしながら愛莉のほうを向く。
「私は火乃華さんに憧れるなぁ、ナノマシン理論凄かったもの・・・」
「また始まった・・・恵美の火乃華博士話・・・米村さんより火乃華博士のこと詳しいかもよ・・・ねぇ恵美。」
智美は呆れた様子で既に半分魂が抜けかかっている恵美に話しかける、
「っつ、ココにもマッドの卵が・・・危険すぎる、うちの大学・・・」
光子の母『水面』ほどで無いにしろ愛莉の母『火乃華』も結構危険な実験を繰り返す事で有名だった、この前はナノマシンの
暴走で訳の分からない生物が誕生しかけた事があると言うのを水面から聞かされていた光子が呟く。
(ところで・・・何でこの子達ってず〜っと手を握ってるの?・・・もしかしてそういう関係?)
愛莉は恵美と智美がずっと手を握りっぱなしの事に気付いていた。
 様々な思惑を乗せて光子達を乗せたクルーザーは湾内を出ると速度を上げ、保養所のある亜玖島へ進路を取った。
 途中昼食をはさみながら順調に航海は続き、8時間後クルーザーは無事に亜玖島に到着し桟橋に着岸した。









                                        『ショッカー女子高へようこそ』 光子変貌編
                                             第一部 『仕組まれた罠』〜了〜

                                                   第二部へ続く

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